『日英の歴史的住宅の次世代交流セミナ-』を開催

最終更新: 2021年1月11日

全国重文民家の集いでは、2019年度のグレイト ブリテン ササカワ財団助成事業を受けて、『歴史的住宅の次世代継承者による日英交流プロジェクト』を実施しました。この一環として開催した『日英の歴史的住宅の次世代交流セミナ-』(2020年2月)について報告します。

重文民家の集いでは、私所有の歴史的住宅を代表する組織である英国の歴史住宅協会、2015年から交流を続けています。この会では次世代メンバ-の会を設け、若手会員の交流や引継ぎの勉強会などを行っています。また、ヨーロッパ歴史住宅協会にも次世代メンバ-の会があり、国を超えて継承の課題に取り組む基盤をつくっています。

そこで、英国歴史住宅協会とヨーロッパ歴史住宅協会の次世代の会代表者を招き、次世代継承を考えるセミナ-を二会場で開催しました。英国の次世代組織について学び、今後、重文民家の集いでも若手のつながりの芽を育んでいくための参考にすることが目的です。

・2月16日(日)/大阪教育大学天王寺キャンパス/10住宅から22名参加(次世代8名含)

・2月19日(水)/彦部家住宅(桐生市)/5住宅から8名参加(次世代1名書面参加)

セミナ-では、英国のお二人の報告のあと、参加者を交えて意見交換をしました。

英国の歴史住宅協会の次世代の会の会員は約300人で、家を継承する人をサポ-トし、継承の準備をしてもらうために活動していること、引き継ぎまでの期間を考え、家族のコミュニケ-ションを密にし、早くから将来計画を立てることが重要であると報告されました。

また、ヨ-ロッパ歴史住宅の会の次世代メンバ-の会には約30か国が参加し、毎年会議を主催し、住宅の所有権や管理、相続などの課題を探求していることが報告されました。若手が集まることでお互いを学び助け合えること、また、歴史的住宅は負担でも問題でもなく、所有し維持し、ともに生きることが喜びであり、名誉ある挑戦と捉えて活動していることが強調されました。

お二人とも両親が健在ですが、30歳代半ばと40歳代はじめに、それぞれ家を引継ぎました。若くして引き継ぐと、新しいことを始めるエネルギ-があるのですが、家の維持管理にかかる費用をどう工面するかが大きな課題であり、家や庭を活用して収入を得る工夫をしていることが紹介されました。その際、地域コミュニティとの関係性を大切にし、家や庭がダメ-ジを受けたり、家族のプライバシ-が脅かされないようにバランスをとることが重要であると述べられました。

意見交換では、英国の二人から、つぎの点が出されました。

〇家を引き継ぐにあたり重要なことは、

 ①一緒に家の継承に挑戦してくれる理解あるパ-トナ-を得ること、

 ②地域のコミュニティとのつながりを大切にすること、

 ③家族とのコミュニケ-ションを密にし、早くから将来計画を立てることである。チャレンジ精神も大切である。

〇同じ境遇にある若手世代が情報交換し、お互いをサポ-トできる体制が大切である。

〇引継ぎの課題の根本は両国で同じだが、英国では多くの人が歴史的住宅について知っている。もっと重文民家を知ってもらう取り組みも必要ではないか。

〇政府からの補助金は英国でも少ないし、あっても制約が多い。政府の補助よりも、民間企業等のサポ-トを募る方が、自由性がある場合もある。

重文民家の集いでは、このセミナ-が若手世代のための初めての交流会となりました。特に大阪でのセミナ-では、若手世代が親しく話をし、メ-ルアドレスを交換するなど、若手のつながりの芽が生まれました。つぎは、この芽をもっと広げる活動を考えています。

                 

重文民家の集い 大阪会場でのセミナ-
重文民家の集い 大阪会場でのセミナ-

重文民家の集い 桐生会場でのセミナ-