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重文奥家住宅茅屋根 蔵 木小屋 外回りの漬物小屋の修復工事令和7年5月度月報

1、はじめに


今月は文化庁の西山主任調査官による修復工事の指導があるためまずは5月度の工事の進捗状況を報告しそのあと今後の修復工事の指導を受けたことについて述べることとする。




2、木小屋の修復工事


木小屋工事足場の解体後 (写真―1)
木小屋工事足場の解体後 (写真―1)
木小屋の土塀補修(写真―2)
木小屋の土塀補修(写真―2)
木小屋の土壁の修理(写真―3)
木小屋の土壁の修理(写真―3)
木小屋足場解体後の写真―1の左端土壁新設(写真―4)
木小屋足場解体後の写真―1の左端土壁新設(写真―4)

木小屋の瓦屋根 木造建築部分は4月に完了し足場解体完了した。

5月にこの建物の土壁の補修(写真―1,写真ー3)と土壁の新設(土壁の跡はあるが封階部分)の工事を行った。 今後一部の土壁が外側に傾いている部分、床の叩きについては文化庁の指導をもとに工事を進める予定。




3,物置、漬物小屋の修復工事


これらの小屋は古材を使って建築されているため傷みが激しく修復の方法を決定すること難しく文化庁の指導をもとに方向を決める予定。

 



4、土蔵の修復工事


土蔵1階の小部屋 床組補修 
土蔵1階の小部屋 床組補修 

土蔵 1階床 根太取付
土蔵 1階床 根太取付

土蔵 屋根 壁 荒壁塗 
土蔵 屋根 壁 荒壁塗 

土蔵 屋根 壁 荒壁塗
土蔵 屋根 壁 荒壁塗

土蔵の修復工事は1階の敷居補修 根太 床 畳寄せ取付 屋根・壁小舞掻き 屋根石据え付けを行い 現在壁土の乾燥を行っている。

そのあとは最終仕上げに入る。 7月には置き屋根のこうじにはいるよていである。

 

以上が今月の工事状況であるが、次に文化西山技官による朱副工事指導について述べる。

 

根太;床を支える梁のこと




文化庁調査官 奥家住宅修復現地指導について


日 時

令和7年5月28日(水) 11:20~16:30


出席者

【文化庁】 西山主任調査官 【広島県】川邊主任 【三次市】古矢課長 山岡掛長 【文健協】片桐所長 岡 堤 【所有者】奥博光 まり子


◆     現地指導前に 木小屋の炭素年代測定に関する論文{坂本・中尾、2025}皆様への配布と報告

◆     日程説明 (古矢)

◆     資料を基に各種の修理方針や竹林対策の説明、宅地内の排水設備、事業費・事業期間の変更、修理報告書の作成等

について説明 (岡 堤)


【土蔵】

・土蔵の入口の戸に打掛錠を取り付けたい。(所有者からの要望)-フラットバーを設置したいと考えているがどの程度の趣向を凝らしても良いか(岡)-長期的な目線で費用的効果の観点で検討していただきたい(西山)


【木小屋】

北面を筋堀りし、ブロック壁と防根シートを埋没したい。松対策であるが出雲大社で実施したことがある。

(岡)-奥家住宅滞在しているときに竹が木小屋内に侵入していた。 竹は生育が早く維持管理に労力が割かれる。 今後のために実施していただきたい。

・木小屋の2階に上る木製のはしごは文化財ととらえるべきか。(岡)

いいえ そのため現状の仕様と異なっていて問題ない(西山)


物置及び漬け物小屋

・強度を保つため壁は乾式工法で修理したい。

⭢ 乾式工法でもやむをえない。ただしどこかに現状の土壁を残してほしい。また仕様変更について修理報告書にしっかり明記してほしい。


【勝手口門-塀】

塀東面の後設仕切の取り外しについて、塀南側の未解体範囲でも実施してもよい。 ただし、補助金を使うことはできない。(西山)

・勝手口門の復旧後の壁は乾式工法でよい。(西山)


【母屋】

・小屋裏のダクトは前回の修理で取り付けたものか(西山)

⭢はい(片桐)

⭢上屋桁上部の妻面をふさぐことで, 居間、台所の換気を高めたいという認識でよいか。(西山)

⭢良い(岡)

⭢杉板は取っ付きか。(西山)

⭢会決りは設けたい(岡)

・獣害防止のため、面戸塞ぎにトリカルネット(プラスチックネット)を設置したい。(岡)⭢以前文化庁の調査官が三次市を訪れた際に、このことを助言してもらったことがある。(古矢)

⭢何色の予定か。(西山)黒か灰色の予定

⭢それなら問題ない。⭢(西山)


【工事全般について】

・工事費増、工期延長が見込まれる。(岡)

⭢ 物置及び漬け物小屋が想像以上に破損しているため、やむを得ない。(西山) 

  

現地確認 (現地確認終了後のまとめ)

{土蔵}

・1階北側の部屋の敷居・鴨居のレベル調整は行わず、建具は開けたままの状態でもよい。(西山)

・土蔵測枠の隙間埋めの紐は取り付けてよい。 ただし派手にならないようにする。 (西山)

・荒壁補修は行わなくてよい。(西山)

・戸前の土戸に派手でなければ打掛錠を設置してよい。(西山)

 

【木小屋】

・土壁は修理工事を通し仕様も判明したため、傾きの大きいものは積みなおす方針でよい。(西山)

・ 何も講じないと竹が建物内に侵入して破損させる可能性が高いため、防根シート(竹対応版)など必要と考えられる。しかしコンクリートブロック積むかは再度検討してほしい。

また、物置及び漬け物小屋も守れるよう木小屋北側に敷きこむのが相応しいと思われる。ただし土壁への影響や費用対効果を考慮しつつ、軒内のどの位置が適切か再度検討してほしい。工事の着手は計画変更承認後にしてもらいたい。(西山)


【物置及び漬け物小屋】

・頭繁材は解体して取り換える方針でよい。木部の修繕に重点に置き、建物全体の傾斜を是正してほしい。ただし、可能な限り土壁を残せるよう努力してほしい。(西山)

・物置の床はあくまで仮設的なものであり、現状は土間であると認識できる。そのため叩きで復旧してよい。(西山)

・漬物小屋は土間の高さをそろえてよい。(西山)


【宅地】

・木小屋内部の入口付近の低い箇所については、石灰などを混ぜた土で高く整地すること問題ない。(西山)

・木小屋の犬走り整備は、既設土間際の縁切りを行うなら問題ない。(西山)

・漬物小屋前の既存縁石を動かすのは保留してほしい。 ひとまず犬走りのモルタル叩きを全部解体し、すべての縁石の位置が明らかになってから判断したい。(西山)


【母屋】

・居間換気の納まりと面戸塞ぎは問題ない。(西山)

・叩き補修は勝手口周りで行い、生活に支障のないようにしてほしい。(西山)


頭繁材:柱の上端部をつなぐ横木のこと

犬走リ:建物の外側に施工された幅1m前後の通路のこと

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